肝“ 腎 ”要の腎臓のはなし
目次
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病とは、腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下するか、あるいはたんぱく尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。
腎臓は血流の豊富な臓器であり、動脈硬化の影響を大きく受けます。
そのため加齢でも腎機能は低下してきますので、高齢になるほど慢性腎臓病の方は増えていきます。
日本には約1,330万人の慢性腎臓病患者さんがいると言われており、これは成人の8人に1人に当たります。
慢性腎臓病が進行すると末期腎不全に至ってしまいますが、それだけではなく慢性腎臓病の方は心臓や脳にもご病気を起こしやすいことがわかっており、その側面からも慢性腎臓病の早期発見・治療が必要と考えられています。
性腎臓病と食事療法
慢性腎臓病の治療は現在のところ特効薬はありません。
原因に応じた薬物療法、食事療法、運動療法、生活習慣の改善などをそれぞれ組み合わせて治療が行われます。
今回はその中でも食事療法について医師の立場から述べさせていただきます。
食事療法
慢性腎臓病では食塩を摂りすぎると血圧が上がりやすくなり、腎臓にも悪い影響が出ることが知られ、さらに血圧上昇、動脈硬化を介して心臓や脳のご病気を起こす危険も増えると言われています。
慢性腎臓病の方には1日3~6gの食塩制限が推奨されており、減塩により血圧も下がる効果が期待でき、むくみの予防にもなると考えられます。
しかし、高齢の慢性腎臓病患者さんのなかには、長年に渡り食塩の多い食事を摂られてきた方も多く、急な厳しい食塩制限は食欲の減少、食事摂取の低下、更に筋肉量の減少(サルコペニア)や虚弱(フレイル)を招く可能性があり注意が必要です。
目標値はあくまで目安であり、例えば食塩摂取をそれまでの15gから10gに減らすだけでもある程度の効果はあるものと考えられます。
たんぱく質摂取制限も食事療法の1つとして挙げられます。
腎臓はたんぱく質からできる老廃物を処理してくれますので、摂取を制限することで老廃物の産生が少なくなり、腎臓の負担を減らしてくれます。
ただ、たんぱく質制限はエネルギー摂取量も減りがちになり、塩分制限と同様に筋肉量減少につながる危険性があります。
特に高齢の方は過剰摂取を避ける程度の対応でよい場合も多いです。
他にも腎臓の機能の1つとして体のミネラル、イオンのバランスをとる働きがあります。
慢性腎臓病が進行すると、塩分以外にも各々のバランスが乱れて、高カリウム血症、高リン血症、血液が酸性に傾く酸血症などが合併します。
その都度必要に応じて制限や投薬が必要になります。
おわりに
慢性腎臓病の食事療法について簡単に述べさせていただきました。
食事療法は「制限」と思われる方が多いのですが(もちろん過剰に摂ることは控えた方がよい状況もあります)、過剰な「制限」は害になることもあり得ます。
どの栄養素に関しても「摂り過ぎ」も「摂らなさ過ぎ」もどちらも避け、何ごとも程々が肝“腎”でしょうか。
毎日の食事にお悩みになる際は、栄養指導の機会を主治医の先生に設けてもらいましょう。
この記事の監修者
内科医長 河村 哲也
腎臓内科
資格
- 日本透析医学会透析専門医
- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本腎臓学会腎臓専門医、指導医
問い合わせ先
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- 【更新日】2022年12月19日
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